良い「お見合い写真」って何だ!
<はじめに写真がある>
「お見合い」というステージでは、社会生活に関する諸条件や経歴が予め明示され、その人となりはお会いしてからという事になりますが、ヴィジュアル社会といわれる現代では、初めの出会いのきっかけとなる「お見合写真」の役割が非常に重要なものになっています。実際のご歓談であればお互いのパーソナリティーやメンタリティーなどの、動的な印象が評価の対象となり、単なるルックスなどの「見た目」は必ずしも最重要ではありません。
しかし、写真は静止していますので、まじまじと、また何度も、場合によっては色々な人たちに眺められ吟味される事になります。そしてここをクリアしなければ次に進めないという状況が出来しているのです。
<良い「お見合い写真」とは>
このことには、お見合いという制度そのものの変貌が背景にあります。ことに現代の都会では、インティマシーを持った月下氷人(仲人)がお二人の間に立つケースは減少しており、義理と人情のしがらみから自由な、結婚情報産業を利用する人々が増えて来たのです。「お見合い」から「マッチング」へ、多数のプロフィールの中から、まずは見た目の印象によって、より良いパートナー候補を選ぶという作業は、「出会い」のきっかけを提供する結婚情報産業の定着と共に、非常に一般的になりつつあるのです。
では、良い「お見合い写真」とはどのようなものでしょうか。写真館にはどこでも「お見合い写真」を撮影するコースがあるはずです。かなり高額な撮影料を請求する有名写真館もありますが、お金をかければ良いお見合い写真が撮れるかと言えば、必ずしもそうではないのです。何故でしょうか。それは十年一日になりがちな大多数の写真館は、時代の流れから取り残されているケースが多いからです。さらにその写真によってどのようにアピールするべきか、またその写真がどのようにアピールするのかを洞察する感性と技術とを欠いている場合が多いからです。
しばしばご家族や友人の撮った写真の方が、職業的写真館で撮影した写真よりも良い場合があります。何故かと言うと、それは自然な表情が捉えられているからなのです。観る人の感情機能を動かすのは一にかかって表情なのです。ですから初対面のカメラマンによる撮影で、緊張のあまり、引きつった表情で写ってしまうのであれば、親しい人に写してもらう方がましかも知れません。
とは言っても、技術が無く、注意が足りないために、残念な結果になってしまった写真が非常に多いのも事実です。ブレたりボケたりは論外としても、だらしない姿勢や垢抜けない服装になってしまったり、顔に醜い影が出てしまったり、不吉な象徴が写りこんでしまったり、雑多な汚い背景のために未来への明るい希望が破壊されている、あるいは父親や母親と喧嘩しながら撮ったのでやる気のない酷い表情になってしまった、というような負のイメージが際立つお写真を、私は数多く拝見して来ました。一般的に言えばやはりプロにお願いした方が無難でしょう。
長年人物写真を撮影し、多くの「お見合写真」を撮影してきた経験から言うと、被写体の良し悪しにかかわらず、多くの人に好まれ、「評判の良いお見合い写真」と言うものが確かに存在します。しかし、それもずいぶん昔とは様変わりしてきたというのが、素直な感想です。つまり「一般に好まれるお見合い写真」にも時代の流れというものがあるのです。当スタジオはもともとコマーシャルを手がけていましたので、そういった時代の変化には敏感に対応する事ができた訳ですし、クライアントの要請に合わせて効果的にプレゼンするメソッドをアプリオリに所有していたのだと言えましょう。
では次に、簡単にお見合い写真の変遷をたどってみましょう。それは概ね、次のようなものです。
<旧世代のお見合写真>
旧タイプを第一世代とすれば、それはいわゆる写真館の写真。重厚な背景、装飾的な家具、多少気取ったポーズ、無表情あるいはお澄まし顔。いわゆる写真館の記念写真です。こういった写真が見合い写真として無難であった時代が、かつて存在しました。勿論、今でも、台紙に入った「お写真」が相手方に届き、両親だけでなく何世代かに渡って吟味される場合、そして、旧世代の意見が尊重される環境にある場合のみ、この旧世代の見合い写真も出る幕があると言えるのかも知れません。
しかし、このタイプの見合い写真はもう古いのです。人間的な魅力に乏しく、積極的にお会いしたいという気持ちにもならない、親しみがわかない不自然なステレオタイプ(杓子定規)の型写真だからです。写真がさほど重要な情報でなかった時代はそれで良かったのでしょう。しかし自然な個性が評価され、しかもヴィジュアルが重視される現代では、もっと自分自身を積極的に、写真によってプレゼンする必要があるのです。
さらにパソコンやスマートフォンが普及した昨今では、1枚1枚、台紙に入った経歴書の写真をじっくり見るのではなく、多くの画像をモニター上で短時間のうちに見比べるシステムが普及しています。そうなると、よりインパクトがあり、華のある写真、何かプラスアルファーの感じられる写真でないとアピールしにくいのです。
<新世代のお見合写真>
ここに第二世代のお見合い写真が登場しました。これについては弊社の基幹スタジオである「スタジオ☆ディーバ」が、わが国のお見合い写真の進化に先鞭をつけてきました。明るく活動的なライティングと単色の背景、自然な表情でポジティブな笑顔。あるいは、タレントの撮影で培った技術による、個性を引き出しつつ、自然で、水際立ったスナップ写真。良い「お見合い写真」はまず良いポートレートであって、表情も、シチュエーションを含めた雰囲気も、生き生きと明るく見えるものです。
ほとんどの方が経歴書には「明るく楽しい家庭を築きたい」と書かれますが、そこに暗く怖い写真が付いていたら台無しです。百聞は一見に如かずといいますが、一枚の写真は百の文章よりも雄弁です。そして、「お見合い写真」はルポルタージュではなくコマーシャルだと割り切っていただきたいのです。実際は暗く後ろ向きの方でも、そんな写真でプレゼンしてはいけません。その人であることが判れば良いだろう、などと思っているとしたら、とんでも無い間違いです。相手の方に、好印象を与える事は勿論、明るくしっかりとした未来を予見させる、そんなプラスのイメージを含んだ写真が必要なのです。
そのためには、洗練されたセンスと常識とを絶妙にアレンジしつつ衣裳をコーディネートし、その方の良い個性を引き立てるヘアメイクを考え、緊張を和らげるような楽しい環境のもとで、しかし撮影する側は想像力を働かせてコミュニケーションの結果をフィードバックしながら、細心の注意を払って、加えて撮られる方が疲れないよう短時間で要領よく撮影しなければならないのです。それがアマチュアとは一線を画するプロの仕事です。
今は学生たちも就職において、撮影スタジオで気合の入った履歴書写真を撮影する時代です。まして結婚となれば一生の大事ですから偶然の幸運を当てにするのではなく、写真にも細心の注意と最大限の努力を払っていただきたいのです。きっかけは最大限に、間口は広く、あとはご本人のパーソナリティーとメンタリティーが勝負です。そこまで導くのが私たちプロフェッショナルの使命なのだと考えています。
<ニューウエーブは絶滅危惧種?>
携帯電話の普及と共に、携帯電話の画面でデータや画像のやり取りをする結婚情報産業が増えました。そうすると、これは完全に本人同士のやり取りとなりますので、両親や祖父母が相手の画像等を見てダメ出しをする事がもはやありません。あくまでも核家族化の延長としての個人主義的自由主義にのっとった自分本位の選択となります。その過程である現象が生まれました。
特に初期の携帯電話では画面が小さいので、使用する写真は殆ど顔のアップ、画像精度が悪いのでメイクは異常にケバく、肩や手を画面に入れて甘えのポーズでセクシーにアピール。修正はしまくりで骨格も別人。女性の写真は、まるでキャバクラ用の写真のよう。そんなお見合い写真をかつてはよく見かけたものです。これを私は「ニューウエーブのお見合い写真」と呼んでおりました。
ところが、この種は定向進化の末、進化の袋小路に陥って行ったようです。つまり今ではほとんど滅び去っているように見えます。元来わが国では、結婚という事に対するまじめな考えがベースにあり、さらに東日本大震災を始め、何度かの天災を経験して来たのです。やはり結婚には、互いをパートナーとして認め合いながら、互いに進化していく、という可能性が必要なのではないでしょうか。キャバ嬢の写真では現在は在っても未来は無いのです。
私達はその人らしさを大切にし、修正は最小に止めたいと思っておりますし、結婚を前提とした出会いのための写真では、健康的で明るく清潔というイメージを逸脱してしまうような過度のセクシーさは慎むべきだと考えております。
<どこで撮るんだ「お見合い写真」>
それではお見合い写真はどのようなスタジオで撮るべきでしょうか。
現在、多くのお見合い写真が、第二世代のテイストに倣うようになり、私たちが作り上げた「新世代のお見合い写真」に追随しようとする写真スタジオが多く出てきました。しかし、ただ形ばかりまねて見ても本当に良いものはできません。
私たちはお客様の個性を生かすメソッドを持ち、さらに社会的な要請やその方の未来へのヴィジョンに応じて撮影してゆく想像力と技術力とを持ち、誠心誠意結果にコミットしております。ですから例えば男性の場合は、この方の場合はより誠実さとか、安定感だとかを表現しよう、そうすれば彼の理想とする平穏さを求める「家庭的な」女性の評価が高いだろう、あるいはこの方の場合は生活力とかバイタリティー、そういったものをアピールした方が、打ち続く海外駐在も厭わずに同行してくれるような「活発な好奇心のある」女性の支持を受けるだろう、そういう事をお客様とのコミュニケーションの中で考え、そのプレゼンに沿ったヘアメイクをし、撮影をするのです。これがコマーシャルの方法なのです。勿論、女性の場合も同様の方法論です。
しかし、逆に、求められる女性のイメージに関して言いますと、社会情勢に影響される部分がかなり大きいように感じています。たとえば大きな震災がありますと、その後かなりの期間は「絆」のコンセプトのもと、清楚で家庭的な女性のイメージが求められて行きます。いざという時に、どこにいるのか判らないような女性では困るという心理です。連れて歩きたくなるような華やかな女性のイメージはもはやお呼びでは無くなります。
このように撮影する側が、社会生活の中でその方をプレゼンするというコンセプトを持ち、時代の流れを読む感性と技術とを持ち、誠意をもって撮影に当たるならば、最高の「お見合い写真」が成就する事でしょう。ですから皆様にはそんな写真スタジオでお見合い写真を撮る事をお勧めいたします。
<「千駄木スタジオ」へいらして見ませんか>
弊社運営の「千駄木スタジオ」も「テンスタジオ」も、ディーバが嚆矢を放った理想的なお見合い写真のエッセンスを受け継ぎ、現在ではこれらのスタジオが、このCM風の「新世代のお見合い写真」の正統な継承者となっています。特に「千駄木スタジオ」はトータルコーディネートを特長とするハイクオリティーなポートレートを提供するスタジオです。ここでは、常にベテランのヘアメイクが撮影に立会います。衣装のコーディネート、ヘアメイク、スキルの豊富なカメラマンによる撮影がセットになっていますので、安心してお任せいただけます。その方の個性を尊重しつつ、清楚な美しさを、あるいは楽しい親しみやすさを、時には頼もしさを、そして優しさを演出していく事ができるでしょう。ここで個性を尊重すると言う事の意味は、その方の中に元々あったものを引き出して、プラスのイメージとして表現するという事。「ルポルタージュでは無くコマーシャル」だとは言っても、決して嘘のイメージではないのです。
「テンスタジオ」は少しカジュアルなスタイルのスタジオとなります。
私達としては勿論「千駄木スタジオ」にいらしていただきたい訳ですが、地理的な理由や時間の折り合わない場合もあるでしょうし、地元にも良いスタジオがあるかも知れません。評判や見本写真を見て、電話の対応の様子や明確なコンセプトがあるか (お見合い写真と普通のポートレートはどう違うかなど)、また、「常識のある」ベテランのヘアメイクが立ち会うのか、などを尋ねたりして調べてみてはいかがでしょうか。どうせ似たような出来上がりだろうと思っていたら大間違い。どの写真館でも得意分野は異なりますし、新時代のお見合い写真にふさわしい考えや技術のある所を選んで下さい。
それと弊社の「テンスタジオ」で時折見かけるのですが、紹介されたので仕方なく来たが、早く終わって帰りたい、という雰囲気全開の方がいらっしゃいます。しかしそれではもったいないし、良いものはできませんね。最後に一言申し上げたいのですが、写される側としても多少の努力は必要なのです。冒頭で述べましたが写真は非常に重要であり、真剣に取り組んでいただかねばなりません。ばかばかしいと思わず、笑顔の練習をして、衣装にも考えをめぐらす。撮影の前日は呑みすぎない、楽しかった事を思い返して撮影時にその気分を再現できるようにする・・・あとは心を無にしてプロフェッショナルにお任せ下さい。
さて、今回はいわば「至高のお見合い写真」について日頃考えている事をざっと書いてみました。多少は参考になりましたでしょうか。
では・・グッドラック!